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zoom RSS 誇りは自分で創りだす 装丁家・鈴木成一

<<   作成日時 : 2007/05/23 17:58   >>

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依頼主たちは、想像どおり想像以上であるといい、本はジャケ買いというのもありだし、出版者としてやはり売りたい、そういういろんな思いで本の装丁を依頼する。ベストセラーの蔭にこの男ありといわせ、勝負本はやはりこの人にと多くの人からラブコールを送られる。

本の装丁家のトップを走る人、鈴木成一が昨日NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演した。

鈴木は朝方人間、朝5時起床やおら本を読み出す。趣味で読んでいるのではない。依頼のあった本の、原稿である。本の内容を何度も読み込んで、イメージを掴み、装丁にはいる。鈴木はこの道23年、常にこのスタンスを守り、そして最後の仕上げはいつも一人でする。

本屋で客に思わず手に取らせる。そのためには、目立つだけでは駄目。その本の個性を際立たせる事が大事。シンプルで明確に演出することが鈴木のこだわりである。

鈴木の元にホラー小説の装丁の依頼がきた。本の内容から、ポイントは子供にありと思い、本のタイトルの文字を自分の子供に書かせ、それに修正を何度も加えていった。それは、装丁には正解があるという信念が鈴木にはあるから。自分をころし、本の個性に照らす。

元格闘家からの依頼があった。2冊目となる依頼は、クライアントに強いこだわりがあった。エッセイのラストにテーブルクロスにコーヒーをこぼし、しみとなるというエンディングをイメージした表紙にしてほしいといってきた。

鈴木は依頼主の熱い思いを受け、なんとか思いを実現しようと奔走する。しかし、思った以上にコーヒーのしみをうまく写真に捉える事が出来ない。何度も繰り返し、写真を撮らせた。クオリティーにこだわるために。決して鈴木は手抜きの仕事はしない。納得のいく、コーヒーのしみを求めて。これが、鈴木のスタイル。

ところで、鈴木にとって今まで手がけた本のなかからベスト一冊を選ぶとしたらという問いに、鈴木が選んだ一冊の本は、藤沢周の「ソロ」という本を挙げた。装丁というのは、読者をまきこんでいく、ひきずりこむようなエネルギーが必要。鈴木はあまり周りの本との比較をしない。装丁は本の中にしかなく、内容にしかないと言い切る。

鈴木が大学の芸術部で学び、4年生の時戯曲の表紙の依頼を受けたのがこの世界へのつながりの第一歩といえる。人に期待されたのがうれしかった。その本が出版社の目にとまり、評判となり装丁家の道に入る事になった。

もともとサラリーマンになる気のなかった鈴木は、大学院を中途でやめ装丁家としてプロの道に進む決意をする。その時から、鈴木のイバラの道が始まる。駆け出しの鈴木に、世間の冷たい洗礼があびせられた。

ある時、仕事をしても支払ってもらえず、やむなくサラ金で借金をするはめになった。悶々とした日々が続く。くやしくてたまらない、毎日だった。そんな時鈴木は、自分はまだその程度の人間なんであると自分に言い聞かせた。

どうしても大事な人ならすぐにでも支払ってもらえるはず、そう理解し、くやしさをバネにすることにした。自分の替わりはいくらでもいる、そう実感していた。

10年間苦闘した結果、少し仕事が回りだしたのを契機に、仕事の打ち合わせを出かけることから、先方に来てもらうように方針転換した。相手の熱意にこたえる仕事、必要とされていると感じられる仕事をするために。

鈴木は出版者と喧嘩を繰り返した。去っていったものもあれば、残ったところもある。そんな時、認めてもらえたと感じた。そんなある日、10年目大手出版者から思いがけず表彰された。推薦してくれたのは、一面識もない村上龍であった。

村上の鈴木評は、本のことをよくわかっている人だという。本をよく読みこんで装丁をしていると感じたという。装丁を依頼するなら、鈴木に、鈴木以外には考えられないとまでいわしめた。鈴木はこの経験から、自分の仕事をどこかで見ていてくれる人がいたと感銘を受けたのである。

それまでの理不尽な仕打ちも、自分の力量からしたら当然のことであった。が、くやしさにあふれ、鈴木はわかってもらえる関係をつくるように努めた。

鈴木のデザイナー人生で初となる、11人の新人のイラストレイターと一緒に仕事をしようという企画を立ち上げた。700人の中から選ばれた11人のイラストレイター。その中で、気になる二つの作品に鈴木の目が止まった。

依頼主は、若手人気作家、読者の中心は若い女性である。「神田川ディズ」というタイトル、若い大学生のこころを描いた作品である。鈴木のもとめるもの、予定調和じゃなく、ワクワク感のあるもの。若い才能と組んで、新しい表紙をつくろうとする。

選考に残った2作品のうち、鈴木の気持ちを掴んで離さない作品があった。独特のタッチでインパクトの強く、登場人物がたくさん書かれたものであった。書いたのは、39歳の女性であった。
あくまでも、その作品は荒削り。それと、オレンジカラーを印象的に使った作品のふたつ。

二つを見て女性スタッフは、気持ちではこれ、理性ではこっちなんだと感想をもらす。気持ち、登場人物を描いたもの、理性はもう一つのオレンジ色の作品。鈴木の最終判断は、インパクトの強い、独特のタッチで登場人物を書いたものを選んだ。

実際の作業に入り、文字とインパクトの強いイラストをどういかすかにある。バランスにこだわるとイラストのインパクトをそぐ。なかなか出口の見えない状況がつづく。打つ手が見えないとき、無意識でみる。

別のことをやる、あえてそうしてみる、不意にみたものの感覚をさぐる。気をそらすことで気づくことがあると、鈴木はいう。鈴木のプライド、イラストレイター、編修者をも満足させるものにしあげること。

鈴木は一冊の本を取り出し、以前にやった手法を参考に半透明の文字を使う事を描き、これしかないと決め手、仕事を進めた。作者も納得、イラストレイターも納得という、鈴木のプライドがかかった、仕事である。ようやく鈴木の納得のいく、作品が仕上がった。こだわいぬいた、鈴木の気持ちの入った作品となった。

鈴木は、締めくくりの言葉をこう表現した。
次の仕事がくるってことです、これに尽きます。これが鈴木の考えるプロフェッッナルである。


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