己をださず、自分をだす 庭師北山安夫

カーデザイナー奥山が以前プロフェッショナルで、日本人ならではの切捨ての美学、すなわち禅に通じるシンプルさを追求するといっていた。

それとまさしく庭師北山安夫も同じ流儀を貫いていた。徹底的に無駄をそぎ落とし、凛とした姿を求める。

庭師北山安夫は、弟子達に一つのこだわりをみせる。それは、基本を大事にすることである。時時のあいさつ、掃除、そして言われたことをメモる、簡単なことをきっちりとやる、そういうことを習慣づけるのが大事と考える。

北山の庭に対する一つの考え方がある。それは京都にある建仁寺にある「潮音庭」にみられる枯山水の庭。渦巻きがたで360度何処から見ても美しくみえるように、工夫がこらされている。

北山の石へのこだわり、「潮音庭」の中心的存在である三尊石がある。主石をはさみ、左右に配置された石は二等辺三角形になるようにしてある。北山の美学の真骨頂である。

主張しすぎないこと、感じているようで、感じていない、なぜか振り返ってみたくなる庭をめざす。ただいろいろあればいいというものではない、、本当に必要なものだけを配置する。

群馬の禅寺で庭の修復依頼を受ける。主役は桜。そのために参道にある樹齢100年の「さるすべりの木」が邪魔をしている。桜の美しさを引き立たすために、北山は桜とかさなる部分を躊躇なく切り落とす。

見た人に感動を与えるために、決断する。「切るも愛情、切らずも愛情」。北山は「愛」「愛情」という表現をよく使う。木への愛情があるから、北山は木に話しかける。もっと綺麗になるようにするから。「リンゴ農家」の木村もそういえば、木に語りかけていた。

やはり、そこには「愛」があるから。

北山の庭づくりを語るうえで欠かせない要素として、「石組み」といわれる手法がある。常に石と対峙するとき、どんな大きな石にでも「気合まけ」をしないように、石をねじふせるという。石と向かい合って、気合勝ちすると一回で座ってくれるという。3回失敗すると負け、やめてしまう。

どんな人にも紆余曲折があり、この北山とて例外ではない。10年で修行を終えるのが普通の世界で、勘所の良かった北山は4年で終え、独立した。自身満々で臨んで独立したものの、これといった仕事がなく、お寺の掃除とか、親からの援助で食いつないでいた。

転機が訪れたのは、独立して3年後大きな仕事が入ってきた。400年という時を過ごしているという小堀円周の手により作られた庭の修復の依頼である。まず木の剪定からはじめる。一つ一つ丁寧にこれから後の時間を考えて、木に手をかける。

そんな時、北山はその寺の住職に木を何も考えずに伐採したと叱責される。木の気持ちを考えてやるようにと諭された。その時、北山は自分の考えの浅さに気づかされるのである。それから北山はこの庭ととことん向き合うと決めた。

木の整理に北山は2年をかけた。そして苔づくりに入った。もみじ、桜などと共に松も移植された。しかしその松が石組みとそぐわないという問題にぶつかった。古文書をひもとき、北山は円周の庭と向き合った。

10年の歳月をかけようやく修復を終え、北山は納得のいく庭を作った。このとき一つの流儀がうまれた。北村の哲学である。

「己をださず、自分をだす」・・簡素な庭づくりにこだわっていきたい。庭師の極意がそこにみられる。円周が生きたその時代を思って、自分の我を捨てその当時の人達の気持ちを汲み取る。

庭の修復に10年という歳月がかかった事について北山は、400年の庭に手をいれるのに10年では短すぎると考えるのである。

北山にはいろんなところから庭づくりの依頼がくる。ある日、日本画家からの依頼があった。15坪ある庭を枯山水の庭にして、一年中自然を感じていたいというのである。そこで北山がとった手法が「縮景」と呼ばれる山、谷、川、池などいろいろな要素を盛り込むというもの。

中途半端では、感動を与えられない。北山は最初の打ち合わせから、池が山に負けると判断、当初より池を1.5倍に大きくした。

ここで北山が一番こだわったのが、石で作る橋。この庭の中心をなす大事な「橋」。石の厚さが微妙に影響しうまくいかない。北山は決断をせまられた。石の厚さをそのままにして、橋げたを少しだけけずることにした。イメージどおりの橋ができた。

庭のよさがでるのは、これから2,3年後それを見据えて北山は庭造りに立ち向かう。まさしく作り手である庭師が、その人間性をかけて挑む仕事、それが「庭師」という仕事だと感じた。

北山が語るプロフェッショナルとは
「逃げられない人」、アマは途中でやめられる。プロは出来ないとはいえない、引き受けたい以上最後までやり通す。・・そのように結んでいた。

北山と茂木との会話で印象に残ったのが、北山は映像として記録せず頭の中に残像として残しておくほうが良いと考え、どこかで思い出すという。茂木はそれを受けて、脳の外側の情報より、内側にある情報のほうが生きた情報であるという。二人の表現に違いはあれど、言わんとすることは同じ。

2月15日(金)NHK「プロフェッショナル仕事の流儀・己をださず、自分をだす 庭師北山安夫





この記事へのコメント

れんげや
2014年02月24日 00:54
はじめまして。
素晴らしいです!
北山安夫氏について、ここまで詳しく書かれているものは他に見当たりません。
どこで これほどまでの北山氏の情報を集めてこられたのでしょう?
北山氏も尊敬しますが、あなた様にも尊敬します。

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