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Amazon 前作「ウルトラダラー」で手嶋龍一はインテリジェンス小説の分野を開拓、 それから3年たち、今年の2月に出た新作「スギハラダラー」は、 前作をしのぐ内容で読み人を飽きさせることがない。 今回も前作同様、BBC放送の特派員イギリス人で別の顔は、 インテリジェンスオフィサーというスティーブン・ブラッドレーが、 本国イギリスから謹慎処分を課せられ東京を離れ金沢に住む。 アメリカ人でシカゴの先物相場に目を光らす捜査官マイケル・コリンズの二人と、 スティーブンの恋人金沢の芸者雪花こと涼子が登場する。 そして、白州次郎が東北電力の会長をしていた頃に、 金沢のお茶屋に出入りしていた頃の話も出てきて、 登場人物も多彩である。 東欧の小国リトアニアに赴任した外務省きってのロシア通の杉原千畝。 その杉原によって助け出された「スギハラサバイバル」と呼ばれる人が、 金融史上の革命的な先物商品を次々に産み出し、戦後世界を塗り変えていきます。 このように、作者の手嶋は、語っています。 舞台は、日本の金沢と戦後の神戸、 大二次大戦中の東欧ポーランドにすむユダヤ系の住民が、 ナチスドイツとロシアという二つの全体主義国家に翻弄され、 ユダヤとしてのアイデンティティーを保つために戦後の金融市場を動かしていく。 戦争のために祖国を追われた少年、アンドレイと美少女ソヒィー、 そして貧困に喘ぎ悪ガキだった松山雷児との出会があり、3人が堅い友情で結ばれる。 戦後、3人のうち一人はアメリカに渡り、 一人はヨーロッパに、もう一人は日本で、 それぞれ金融界で活動することとなる。 記憶に新しい「リーマンショック」やアメリカで起きた2・11テロのアルカイーダの資金源に、金融先物市場の暗躍が垣間見られ、市場を操り多額の資金を得たのではないかと。 「エシュロン」という世界の異変を傍受するの存在が機能せず、 2・11テロを未然に防げなかったとする。 今作品は、それぞれの人物の時代背景やその転変を分かりやすく丁寧に掘り下げ、歴史が招いた不幸をバネに生きることに立ち向かう人たちを見事に描いている。 人の心の深層にせまる作品で非常に読み応えのある作品だった。 戦争は、人を不幸にするだけで全てを狂わせてしまうものだと感慨を深める。 大国のエゴ、人間に潜むエゴが蠢く世界を見ることとなる。 今も世界のどこかで戦争や内紛が起きている。 犠牲者を尻目に一方の世界で何が起きているのかと思うと大変悲しい思いに駆られる。同じ人間でありながら、裏表にその存在があるのも事実である。 「スギハラダラー」もフィクションだと作者はいうが、 ノンフィクションと錯覚を起こすぐらい、 歴史的背景を細かく捉え、「杉原千畝」の存在をより印象づける内容である。 読み終えて、ずっしりと心に響くものを私にもたらした。 |
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